日本語のために

 昨日に図書館から借りてきた「日本語のために」であります。

 池澤夏樹さんが編集した「日本文学全集」全30巻は、そうとうにかわった企画で
ありまして、「古事記から須賀敦子さん」まで日本語で書かれたもののなかから独断
で作り出したものです。
 かっての近代文学全集といえば、文壇政治の力関係で作家一人当たりどのくらいの
ページを割り当てられるかが決まるなんてことがあったようですが、池澤さんの編集
は、そうしたしがらみからほとんど自由になっています。
 なんといっても石牟礼道子さんと須賀敦子さんに一冊を割り当てるのは、大英断で
あります。(明治期以降で一人一冊となっているのは、谷崎潤一郎大岡昇平
吉田健一大江健三郎中上健次石牟礼道子須賀敦子とこの7人であります。)
 そんななかで、「日本語のために」という一冊が設けられています。これまで文学
全集で「日本語のために」というような巻は見たことがありませんので、相当に珍し
い企画です。
 この「日本語のために」は全部で10章から成り立っていて、そこには仏教の文体、
キリスト教の文体、琉球語アイヌ語という、日ごろあまり意識されない日本の言葉
に各1章さかれています。全10章に池澤さんの短い解説がつけられていて、まずはそれ
から目を通しています。
 本日に見た解説で、当方の目を引いたくだりを引用です。最後におかれた「日本語
の性格」につけられたものです。
「永川玲二の『意味とひびき 日本語の表現力について』を初めて読んだ時、文章と
いうものはこんな風に解析できるのかと驚嘆した。ここに書かれたことはこの巻を編
む際の指針となっている。
 彼は英文学者であり、丸谷才一高松雄一とJ・ジョイスの『ユリシーズ」を共訳し
た。その後でスペインに渡って定住ヒッピーとして長く暮らした。この時期について
は不思議なエピソードがたくさんある。」
 そうなんだ、この巻は永川玲二さんの文章に触発されて、できたものなのか。
この「意味とひびき」は、もちろんこの巻に収録されているのですが、元は、永川さ
んの「ことばの政治学」にあるものとのことです。
ことばの政治学 (同時代ライブラリー)

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