本日のニュースには伊勢市の神宮鳥居前で、外国からの賓客をむかえる総理大臣の
様子が映し出されていました。現在の日本の総理大臣にとって、この神宮というのが
最大のパワースポットであるということがよくわかる絵でありました。なんとなく、
王権神授をアピールしたいようにも思えることですが、これも本気なのでありましょ
う。その母は「父の娘」のようにも思えるのですが、「父の娘」とは矢川澄子さんの
用語でありますが、もとは「ユング」によるものだそうで、矢川さんの著書には、
次のようにあります。
「ユング心理学に『父の娘』という概念がある。輝かしい父の栄光のもとに生れ、そ
の存在にあやかろうとして、ともすればみずからの女性性を蔑ろにしかねない少女、
とでもいっておこうか。」
総理の母が、女性性を蔑ろにしかねない少女かどうかはわからないのですが、その
存在にあやかろうというところは、たぶんそうでありましょう。それが色濃く投影さ
れた息子であります。このことを息子がどのように受け止めているのかはわかりませ
ん。
伊勢市といえば、ちょうど読もうと思って確保していた笙野頼子さんの出身地であ
りました。最近に入手した文庫には「イセ市、ハルチ」という作品があり、もう一冊
には「母の縮小」というのがありました。
どちらの作品も、現在の総理大臣は読みそうもないものであります。特に、母もの
については。
笙野さんの母親は、作品の中では過干渉のキャラクターで描かれます。(もちろん
私小説ではありませんので、現実の親子関係であるかどうかは問題としません。)
「母の縮小」の書き出しです。
「母が縮んで見えるという視界の異変にずっと苦しんでいた間の事を、なんとか文章
で説明してみたいと思ったのだが、そもそも縮み始めてからの記憶は滅茶苦茶だし、
苦しまなくなったきっかけはごく単純な事で、しかもそれを機会に母と会わなくなく
なってしまったのだから一方的な話になってしまうかもしれないのだった。」
大きな母に抗う娘の話でありますが、この先が楽しみです。
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