昨日ほどではありませんが、本日も気温が上がりました。北国に住む人間は暑さに
弱いことです。
というわけで、本日は体を休めることもありまして、ほぼ終日アパートの部屋に
こもっておりました。せっかくなので持参した文庫本を手にしていました。
今回は二冊の文庫本を携行ですが、そのうち読んでいたのは、次のものです。
上がってきません。アマゾンで検索をしたら、ちゃんとヒットするのに、なぜでしょう。
何か意図が働いているわけではないですよね。というわけで、楽天でリンクです。)
乙川優三郎作品を読むのは、初めのことです。新潮文庫から刊行となった時、この
作者が、以前に大佛次郎賞を受けていることを思いでしました。受賞した時の作品が
「脊梁山脈」で、それ以来ちょっと気になっていました。
文庫化されたのを機に読むことになりました。
脊梁山脈というのは、どういう意味なのかなと思いましたが、終わりも近くなった頃に
この文字が出てきました。
それにしても、一つの作品にいろんな話題がてんこ盛りでありまして、こんなに盛って
大丈夫かなと心配になりますが、最後になんとか一つに収束していきます。
大佛次郎賞を受けたのは、これのメッセージ性を評価してのことでしょう。
主人公は戦争から復員して、叔父の遺産を相続するのですが、それで働かなくとも生
活に困ることはないという、まるで怠け者には羨ましい立場になります。主人公のよっ
て立つところを明らかにしてから、彼の探索の旅(それは復員の途中に世話になった
戦友のを求めてのもの)が始まります。その戦友がやっていたと思われる仕事の歴史を
探ることで、古代史の謎解きにまで発展します。
メッセージといえば、次のようなくだりに感じました。
「政変の背景には緊迫した東アジア情勢による危機感があると言われるが、本当にそう
だろうか。朝鮮半島で動乱が続き、唐が高句麗を攻撃したとはいえ、すぐに日本を呑み
込むほどの脅威が迫っていたとは思えないし、人を暴挙に駆り立てるのは恨みや怒りや
激情であって、大局観や正義感ではないだろう。むしろ冷静な愛国者を装い、危機感を
煽り、利害の一致する不満分子と結び、秘めた目的を遂げようとする利己的な人間が
現れる方が自然である。社会的に非力な彼らはよく天命を持ち出す。」
唐が高句麗というところを北が南をと読み替えると、現代の話となりますが、もちろ
ん、これは現代ではなく、古代史で中大兄皇子についてのところにあるものです。
この作品には、日本文化の底にある朝鮮半島からの渡来人によって伝えられた技術へ
の尊敬があります。