時を待つ

 食べものに食べ時というのがあるとすれば、本にも読み時というのがあるようです。
食べものに関しては、新鮮な時のほうがいいとか、すこし痛みかけてのほうが美味し
いといわれますが、本の読み時というのは、読み手の年格好や気分と関係すると思わ
れます。
 当方の場合は、二十歳前後からえらく渋い小説や本が好みであったせいもあって、
今になって思うと、ほんと何が面白くてあんな本を読んでいたのだろうと思ったりも
することです。なかなか、その当時の作品を読み返す機会はないのですが、老年に
すこし足を踏み入れたところで読んだら、どのような感想をもつでありましょう。
 若い頃に、いつかは読むのではないかと購入して、それ以来ずっと積読状態が続い
ていたものを、すこしずつ手にして読むようになっているのですが、何十年もねかせ
ているうちに、当方の年齢が本に追いついてきたことを感じることです。
そうした本には、四十数年前も前に、当時としてはけっこうなお金を投じて購入した
全集ものがあるのですが、いまはブックオフなどで一冊200円くらいで売られていた
りするものの、当方のものは、手塩にかけて積読して熟成したセットでありまして、
これはブックオフで売られているものとは同じ価値ではないと思いたいことです。
 ということで、本日も読まれることを待っている本に手を伸ばしてみました。