なんとか読了

 先月から手にしておりましたトニー・ジャットさん「20世紀を考える」ですが、
なんとか終わりまでたどりつきました。内容を理解するのが目的というよりも、終わ
りまでページをめくるのが目的でありましたので、まずは目的達成となります。

20世紀を考える

20世紀を考える

 この本の終わりにおかれているのは、トニー・ジャットさんによる「あとがき」と
なります。トニー・ジャットさんは、この本の元になる対談を始めたときには、すで
に病気に冒されていて、文章を綴ることはできなくなっていて、若い歴史家との対話
という形式でやっとこの本ができあがりました。「あとがき」の日付は2010年7月5日
となっていますが、そのひと月後となる8月6日に亡くなったとあります。
この「あとがき」は、トニー・ジャットさん(亡くなった時は62歳)の遺言のような
ものに感じます。
「二十世紀について何を言えるのだろうか? ・・わたしたちには答えを先送りにす
る選択肢はないと思う。というのも、二十世紀という世紀はほかのどの世紀にも増し
て烙印を押され、解釈され、引き合いに出され、酷評を受ける世紀だからだ。・・
その時代は破局的な世界戦争で幕を開き、その時代の信念体系のほとんどの崩壊で幕
を閉じた。振り返ってみるときに、好意的なあつかいを期待できるような時代ではな
い。アルメニアの虐殺からボスニアまで、スターリンの隆盛からヒトラーの没落まで、
西部戦線から朝鮮戦争まで、二十世紀はたゆまぬ人間の不幸と集団的な受苦の連続の
物語であり、わたしたちはその手痛い経験から学んだのである。」
 戦争のスタイルが飛躍的に変化したことによって、戦争または虐殺によって亡くな
る人の数が、それまでの時代とは比較にならないというのが、二十世紀となります。
 その一方で良いところもあるとなります。
「1900年の時点でだれが予見できたよりも長く、健康な人生を送っているのだ。人びと
はまた、これはわたしが書いたばかりのことからすると奇妙かもしれないが、より安全
になっている。すくなくともほとんどの場合には。」 
 これに続いて、「要するに」とあります。
「二十世紀は暴力の脅威とイデオロギーの極端主義によって支配されていたと考えるの
はまちがいではないけれども、そういったもの(立憲民主主義)がわたしたちが考えた
がるよりは多くの人たちのとって魅力的だったということを理解しないかぎり、二十世
紀は理解できないということである。リベラリズムがやがて勝利する、というのは、
この時代の、本当に予想外の展開のひとつであったのである。リベラリズムは、資本主
義と同様に、おどろくほど融通のきくものであると分かった。どうしてそうだったのか、
というのが本書の主題のひとつである。」
 なるほど、この本は、そういうことをいいたかったのか。