学ぶべき教訓

 斎藤美奈子さんがいうところの、私たちが学ぶべき教訓であります。
 それは「草の根右派は九十年代半ばから二十年かけてこつこつと地歩を固め、今日
の隆盛を手にしたのだという事実」となります。
 「ちくま」12月号の斎藤美奈子さんは、中野晃一さんの「右傾化する日本政治」を
参考に、過去30年ほどの政治的傾向を要約しています。
「旧来の右派が新しい右派へと変質していく『新右派転換』の過程ととらえる。新右
派の本質は『新自由主義ネオリベラリズム)』と「国家主義ナショナリズム)」
の組み合わせで形成されている。このような新右派転換へのキーパーソンとなった
政治家として、中曽根康弘小沢一郎橋本龍太郎小泉純一郎、安倍普三の五人の
名前があがる。」

右傾化する日本政治 (岩波新書)

右傾化する日本政治 (岩波新書)

「旧来の右派」といえば、いかにも古い感じがしますが、それが「ネオ・コン」と
なって、これをカタカナで書きますと、なんとなく新しいもののように思えてしまい
ます。それが何をもたらしたかでありますね。
 そのまえに、昨日にブックオフのウルトラセールで購入した「君が代は微風にのっ
て」を話題にします。 上にアマゾンのリンクを掲げましたが、ここには副題のように「これでも“戦前”
ははじまっていないか?」とあります。元版を手に見ているのですが、これには、
このような副題はありませんので、これはすこしいけませんです。
 元版の表紙のタイトルに添えられているのは、「いま、平和ですか?瞳を凝らして
もう一度問い直す本!」ということばです。リンクに添えられている「これでも戦前
ははじまっていないか?」というのは、83年の元版にあったようにみえますが、この
時点で、この本がそこまでいっているわけではありません。
 この本の元になったのは、「1982年夏、共同通信社社会部が出稿した連載記事『い
ま平和ですか』が中心」になります。
 この記事の冒頭には、次の文章がおかれたとのことです。
「どこかで、何かが変わりはじめているようだ。モノがあふれ、色があふれ、音があ
ふれ、忙しくなった私たちの生活に、目に見えない侵食作用が進んでいる。『侵略』
を隠す教科書検定、国民総生産1%枠を超える防衛費増強、そして改憲を声高に叫ぶ
人たちの動き。そんな”現実”が積み重ねられる中で、かって否定されたはずの潮流
が、いつの間にか私たちを丸ごとのみこんでしまってはいないか。その底流は一体、
どの辺にあるのか、戦後三十七年の夏。戦争の評価を問いかけるアジアの人々の目は、
私たちの生活そのものに厳しく向けられている。いま、あなたは平和ですか?」  
 82年というのは、ちょうど『戦後政治の総決算」をうたい文句にする中曽根政権が
誕生した年となります。