「みすず」7月号 3

 「みすず」で楽しみとなるのは、酒井啓子さんの文章もそうであります。
 7月号の酒井さんの文章はタイトルが「若者は『沙漠』を目指す」というものです。
「憧れなのか、それともただ自国に居場所がなくて一番近い『他者』に寄っていった
のか、はたまた彼らのルサンチマンのはけ口がたまたま中東だったのか。ローレンス
もフィルビーも、大英帝国のみならず、帝国末期のヨーロッパの『オリエンタリズム
を表象する代表格だ。本国でこじれたヨーロッパ人が、燦燦たる太陽の異国に憧れ、
自らの鬱屈を中東に投影する。」
 文中にある「ローレンス」は、映画にもなったT・E・ローレンスのことであります。
あの映画を、何度か見たことがあるのですが、中東の歴史にまるで暗いせいもありま
して、なにがなんだかさっぱりとわからないまま、主人公を演じた役者さんに圧倒さ
れた記憶がありです。
 この文章にあるフィルビーというのは、最近翻訳がでて話題となっているキム・
フィルビーさんの父親なのだそうです。

キム・フィルビー - かくも親密な裏切り

キム・フィルビー - かくも親密な裏切り

「余談になるが、親であるハリーがアラビア半島に活躍の場を見つけたかと思ったら、
息子のハロルドはなんと、ソ連に骨を埋めた。第二次大戦末期から戦後にかけて、
MI6(秘密情報部)の部長や駐トルコ大使館員を歴任したあげく、ソ連に亡命した
スパイ、通称キム・フィルビーその人である。」
 中東の歴史と事情にくらい当方は、ここにあるような余談をもっぱらに楽しんで
いるようです。