極楽寺門前

 本日は映画を見にいくこととなりました。前から行こうと思っていたのですが、
格安旅行のために、のびのびとなっていました。
 映画は話題の「海街diary」となります。もちろん原作は吉田秋生さんによるもので
あります。

 もうずいぶん昔のことでありますが、吉田秋生さんの作品を映画化した「桜の園
(もちろん、中原俊監督の最初のもの)を楽しんだことがありました。そのときに
吉田さんというコミック作家がいることを知りました。当方は、ほとんどコミックス
を読む習慣がないのですが、吉田さんの「桜の園」は文庫本となったのを機に、購入
し手にしておりました。
櫻の園 白泉社文庫

櫻の園 白泉社文庫

 それから二十年ほども経過したようであります。今回は是枝監督による作品であり
ますが、旬の役者さんたちがたくさんでて、ぜいたくな作品でありました。
 綾瀬はるか長澤まさみ小林信彦さんがひいきにする女優さんが登場するので
ありますからして、これはおじさんにもおすすめできる映画ですね。三人姉妹にわけ
ありの妹をくわえ、美しい四姉妹が鎌倉の古い住宅で住むというのは、ファンタジー
ですね。その四姉妹の現実にはそれなりにわけがあるのですが、あの家での四人だけ
の生活はどうして可能かなんていっちゃいけませんです。
 江ノ電、海と極楽寺前の駅の風景などを見ていると心がなごんで、うとうととする
ことです。(映画の最後のところで、エンドロールを見ていて、あれっ大竹しのぶ
さんは、どこにでていたのといったのですから、一番かんじんな場面を見逃していた
ようであります。とほほ!)
 極楽寺駅の風景を見ていましたら、上林暁さんの小説集に「極楽寺門前」というの
があったのを思いだしました。本日は夜になってから、この作品を読んでみること
としました。こちらは、奥さんがこどもを連れて家出をして、鎌倉へと引っ越しをし
てしまうという話です。
極楽寺門前 (1976年)

極楽寺門前 (1976年)

「ある日曜日の午後、私は弥生をつれて、鎌倉へ行った。鎌倉驛前で江ノ電江ノ島
電車)に乗って行った。
 鎌倉の町はづれの極楽寺といふ停留所で下車した。極楽寺の物寂びた山門がその近
くに立ってゐた。附近には人家が二、三軒あった。極楽寺坂といふのはどこだらう。
それらしいものも見えない。珠子の借りてる家はどこだらうと思ひがら、私たちは
ぐるりを見廻した。すると、極楽寺の反対側、斜め向うの岡の上に、小さな家が
ポツンと立ってゐるのが、目に映った。」    
 この家出をしていた奥さんは、まもなく自宅に戻ることになりまして、一安心する
のですが、映画のなかで三姉妹を置いて家をでた母は、家と娘たちを捨てることに
なったのでした。