相手にもしたくはないが

 当方のところに滞在している大阪からの客人が、外出したときに
「クロワッサン」を買ってきていました。食べもののほうではなく、
雑誌のほうです。
この雑誌を手にしたのは、実に久しぶりのことでありまして、最近は
どのようなことになっているのかと思いました。
 今回の読み物は、「ひとつのことをゆっくり話そう」というもので、
テーマは「人権」であります。小林健治さん(編集者)と香山リカさん
精神科医)が対談をするのですが、これは全3回だそうです。
 これのリード文には、次のようにありました。
「ネットや街角で、差別むき出しの言葉が公然と飛び交うようになった日本。
香山リカさんと、人権や社会の寛容さを3回連続で考えてみませんか。」
 香山リカさんが、相手をかえての対談を3回やるようです。この相手は
香川さんが指名したのか、それとも編集部なのかわかりませんが、今回の
対談のお相手である小林さんは、「部落解放同盟中央本部で各種メディアの
差別表現問題に長年取り組んできた。」とありますので、なかなか一般の
商業誌ではお声をかけにくい人です。
 香山さんの最初のほうでの発言です。
「私、人権問題ってある程度解決に向かっているんじゃないかとタカを
くくっていたんです。1960年生まれで日教組が強かった時代に育ち、学校で
アイヌ差別や戦争の話を聞いて人権感覚が体に染みこんでいたので、
少なくとも自分の世代から下は、差別は悪いことだと認識しているのだろうなと
楽観的に思い込んでいたんですよね。ところが、この現状を見て、じぶんが
いかに甘かったかと今になって反省しているんです。」
 当方のほうが十歳ほど年長でありますし、当方も香山さんと同じく日教組
(この地域では北教組といいます。)が強い時代に学校生活をおくりましたの
で、香山さんが抱いていた思いは、とてもよくわかります。
 当方が、あれっ、これはちょっと違うかなと思ったのは、この地の青年会議
所のメンバーと話をしているときでありましたが、その時の彼の認識は、戦後
教育は組合主導で、そのイデオロギーに洗脳されているというものでした。
へえー、この人たちは、そういう認識なのだと思い、あえてそれ以上の話には
なりませんでしたが、最近の日本を支配している雰囲気は、まさにその時の
彼の考えの延長線にあるように感じます。
こういう人たちが、今の政権を支えているんだなと思い、すこし気分が滅入る
ことですが、そんな人たちは相手にしないといっていたら、どんどんと思う
つぼにはまるようであります。