本日はごろごろとしながら、手近にあります本を読んでいました。
手にした順であげていきましょう。
- 作者: 河出書房新社
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2014/02/25
- メディア: 単行本
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これの編集後記には、次のようにありました。
「丸谷才一特集を組ませていただく、ということは、三十年来、自分のなかでは、宿題
のようになっていた。積年の思いを遂げることができ、光栄に思う。」
河出書房といえば、1960年「エホバの顔を避けて」、1966年に「笹まくら」を刊行
した版元であるのですが、その後は結びつきが弱くなって、これには河出編集者として
は無念を感じていたことでしょう。
この「追悼総特集」にある「栗原裕一郎」さんの評論にあったくだり。
「丸谷に対する評価は『たった一人の反乱』以前以後で分かれることが多い。処女長編
『エホバの顔を避けて』新装復刻版には松浦寿輝の開設が新たに加えられているのだが、
松浦はそんな場所だというのに、『わたしは『エホバの顔を避けて』を偏愛し、『笹ま
くら』を賛嘆してやまない者だが、ただし正直なところ、第三長編の『たった一人の
反乱』以降、『裏声で歌へ君が代』『女ざかり』『輝く日の宮』『持ち重りする薔薇の
花』と続く・・上質な『市民小説』の系譜に属する丸谷の諸作には、あまり心が震えた
ためしがない』と書くのである。」
当方も「たった一人の反乱」は読み返した記憶がありだが、それ以降の長編小説は
再読することもなしでして、それは「あまり心が震えなかった」からでありましょう。
次に手にしていたのは、中井久夫さんの次のもの。
- 作者: 中井久夫
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1992/10/22
- メディア: ハードカバー
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「私はあわてていた。
前日、京都大学の木村敏教授から電話があった。『アラカワ・シュウサクという画家
がボクたち二人にあいたいんだと。哲学者の市川浩さんからの依頼だ。・・・』
茫然とした。『荒川修作って・・・・」といいかけたところで、電話は切れた。・・
私のほうは、そもそも荒川修作を知らなかった。私は、実は単純な『フネ大好き人間』
で、神戸に腰を据えたのも、元町の書店・海文堂へゆくのも、その部分がそうとうに
大きい。しかし、今回はギャラリーにはいって、主人の島田さんに聞かないわけには
いかない。
島田さんは、ちょっとびっくりされたようだった。口ぐせであろう、『ハイハイ』と
いう相槌をうちながら、わたしの話を聞きおえて、やおら、中にはいって、ちょっと
見には設計図の汚れたもののような版画を二枚、持ってこられた。」
これを見ると中井久夫さんは、神戸 海文堂さんがひいきであったことがわかります。
閉店されたことが大きな話題となったところでありますが、中井さんも残念がっていた
のでありましょうか。
ところで荒川修作さんは、どうして木村敏、中井久夫両氏にあいたいと思ったかで
あります。この文章の終わりのところに書かれています。
「有名な文化人類学者で脱領域の知性であるY氏の米国における学会発表の抄録である。
出ている。私にかんしては誇大広告もいいところである。氏のつね日頃からのご厚情
には濡れるが、やはり気はずかしい。占領軍世代である氏の頭のなかには、存外『日の
丸』がへんぽんと翻っていて、あれこれのニューヨーク知識人に一種の国威の発揚を
なさったのかな、とふと思った。」
ニューヨークで中井久夫さんが知られるにいたったのは、山口昌男さんの論文のため
というのは、いかにもありそうなことであります。