本をたどって 5

 「えびな書店 店主の記」を話題にしているのですが、店主夫人が当方の高校同級生
ということがわかって、話が違った方向にいきそうであります。

えびな書店店主の記 (四月と十月文庫1) (四月と十月文庫 1)

えびな書店店主の記 (四月と十月文庫1) (四月と十月文庫 1)

 今回、この本を手にしたのは上野で「ラファエロ展」と「ダヴィンチ展」を駆け足で
見たあとであったせいもあり、「ラファエロ」と「ダヴィンチ」作品を、当方はとうて
い「見た」とはいえないことと思いました。特に「ラファエロ」はお客さんが多くて
ゆっくりと絵をみるどころではなかったですからね。当方は、「ラファエロ」の作品を
「見たに違いない」と思いたいことです。
 この店主の記は、あちこちに本業にかかわる興味深い話があるのですが、これがいい
のは、やはり最後に「追い書き」に、夫人が登場することでありましょうか。
店主の記にも、ちらちらと家族のことがでてくるのですが、これだけをピックアップ
して読むのもありかと思っていたりしたときに、店主夫人が当方の同級生とわかると、
高校を卒業してからの消息を聞くような思いで、プライベートに関するところを見る
ようになりました。
 先に「開業二十年まで」を引用をしましたが、82年7月 32歳で古本屋になった時、
幼稚園児がいて、夫人は不安がったとあります。思わず、自分の32歳の時はどうで
あったかと思いました。幼稚園児がいたというところだけは同じであったようです。
開業して10年を経過した93年には、「税金をはじめ、滞納した借財を返すことができ
ました。二ヶ月も経たないうちに、娘を心臓病で失う痛恨事が待っていようとは予想
だにしない、つかの間の幸福感でした。」ともあります。
 そうか、当方のこどもとほぼ同年と思われる娘さんは、中学生くらいで亡くなった
のか。
 その後は、「夫婦二人きりになる変事が家庭に起こって、再び音楽会に出かける
ようになった。」とあります。海外への美術館、古書店めぐりも夫婦ででかける
ことが多くあったようです。うるわしき夫婦愛であります。
「店主の記」とは、紆余曲折はあったが、なんとか商売が続けていられるのは、
妻のおかげという感謝の気持ちが良く伝わってきて、かっての同級生が幸せなのを
知り、喜んでいるのでした。