最近手にしている本 2

 その昔の社会思想社からでていた文庫には、牧逸馬とかのものがシリーズとなって
入っていました。物置に文庫棚がありまして、そこに何冊かあるのですが、さて何を
購入していたろうかと思って、現代思想文庫で検索をしてみましたら、異色作家傑作選
ということで夢野久作小栗虫太郎久生十蘭橘外男などがはいっていたほか、
牧逸馬牧逸馬文庫)、谷譲次谷譲次文庫)もありました。これらのもののすべてを
確保はしていないのですが、あの時代にこれらのものはありがたかったことです。
 ちょうど、こうした作家のものに光があたっていた時期で、それぞれの作家の
作品集などもでていたのですが、そちらはぐんと高かったので、この文庫はありがた
かったのです。牧逸馬谷譲次は、もちろん一人三人でありまして、これに林不忘
あわせた一人三人全集が横尾忠則さんの装幀で全集としてでていた頃の話です。
この林不忘の「丹下左膳」については、富士見時代小説文庫で読むことができるよう
になりましたし、この頃は長谷川海太郎さんによる林不忘牧逸馬谷譲次の三人の
作品はずいぶんと文庫になっていました。( 長谷川海太郎さんは、もちろん長谷川
四郎さんのお兄さんでありますが、1935年に35歳で亡くなっているせいもあって、
いまでは青空文庫で読むことができるようです。)
 こうした頃に、個人全集は刊行されたのですが、文庫化されることなく終わった
のが、作家 大坪砂男でありました。それこそ、最近になって出版にかかわって
いた人が回想を発表した「薔薇十字社」から、大坪砂男全集はでていました。
他の作家たちは、三一書房とかからでて、比較的書店で見かけることが多かったの
でありますが、大坪砂男全集は、めったに書店で見かけることがありませんでした。
新刊の時は高価でありましたし、古本になってからは入手困難ということもあって、
ずいぶんな値段をつけていました。
 読みやすいかどうかは別にして、入手困難であった「大坪砂男全集」が文庫で
復活しました。元版は二巻本でしたが、今回の文庫は、全四巻でありまして、各巻
それなりのお値段のようではありますが、それにしても元版全集を買う思いをすれ
ば、安い安い。

 大坪砂男さんが亡くなったのは、1965年とありますので、まもなく没後50年に
なりますが、青空文庫よりも、やはり創元推理文庫で読む方がよろしです。