年の初めの 3

 岩波ジュニア新書「本ができるまで」を手にしていますが、第一部は「本と印刷の
歴史をたどる」(印刷博物館を訪ねて)となっています。これの最後におかれているの
は、「消えてゆく活字」となります。小学校高学年から中学生むけにかかれているもの
でありますから、たいへんわかりやすいことです。
「グーテンベルグの時代から、西洋の印刷・出版文化を大きく支えてきたのが活版印刷
でした。文字の多くが金属活字によって印刷されてきましたが、それは印刷機に動力が
備わり、大量・高速印刷が可能となった近代に至っても変わりはありませんでした。
しかし、長年にわたって、文字印刷の主役をつとめてきたその活字も、現代に起こって
いるメディアの急激な変化に大きな影響を受け、今日その姿を消しつつあります。
 西洋を中心に印刷の一時代を築いてきた活字が、一体どうして消えてゆこうとしての
でしょうか。それは効率化の追求とアナログからデジタルへと変貌を遂げた印刷の姿か
ら垣間見ることができます。」
 2003年に刊行されたものでありますから、この時点でも商業出版で活版を使用するも
のは、ほとんどなくなっていたでしょう。「効率化の追求」は、いくところまでいって、
それが結局は自分の首をしめるということになってしまったようです。
 日本で活版印刷をつかったほどんど最後の商業雑誌は、「本の雑誌」でありますが、
この雑誌が活版印刷を止めたのは、2003年のことでありました。
( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20100311 )
 岩波書店の本といえば精興社印刷のていねいな仕事というのは、良く知られているとこ
ろですが、この本の第二部は「現代の印刷」ということで、「精興社印刷工場を訪ねて」
となっていますので、精興社ファンにとっても楽しめることであります。