あ・じゃ・ぱん

 矢作俊彦さんの「あ・じゃ・ぱん」が「NAVI」に連載されていたときは、数ヶ月
に一回は「NAVI」を購入していたのですが、この小説を読むためだけに定期購読と
いうことにはなりませんでした。どういうわけか連載中の小説を読むつぐというの
が不得意でありまして、新聞連載小説なども読んだことがなくて、自分が契約して
いる新聞に連載の小説を単行本になってから買ったりしているのでした。
当方のとっている新聞に小説というのは朝刊にだけでありますが、その昔からあわ
ただしい朝に小説を読もうなどという気分にはなりません。帰宅してから朝刊を
とりだしてくるなどということもなしで、新聞小説を読む場としては通勤電車が
一番であるのかもしれません。
 それはさて、「あ・じゃ・ぱん」であります。もちろん当方よりも年長の方々は、
このタイトルを耳にしますと、伴淳三郎ねといいますでしょう。いまではほとんど
話題になることもないのですが、「ばんじゅん」というと「あじゃぱー」という
ギャグ(いまふうにいいますと)が思い出されます。
矢作さんが「あ・じゃ・ぱん」というタイトルをつけた時に、ばんじゅんのことを
思い浮かべなかったわけがないでしょうよ。
 この新潮版「あ・じゃ・ぱん」の帯には次のようにあります。
「ニッポンって何なんだ!?
 戦後分断されrた東西日本の統合をめぐる
 壮大な偽日本史!
 構想七年、二千枚の大作、遂に完成!
 東西日本同時発売」
 当方は、東日本国に居住しておりましたので、東日本国の本屋で購入したのであり
ました。この小説のまえがきのところには、次のようにあります。
「アテンション・プリーズ。このフィクションは小説です。あらゆる物語はロマンス
なので、登場する団体名、会社名、及び個人名と現実のそれらとは一切関係がない
などと誰に断ずる権利があるでしょう。」
 数日前、唐突に「アテンション・プリーズ」と記したのは、もちろん「あ・じゃ・
ぱん」で一番印象に残っていたのが、これであったからであります。