月がかわって 5

 しばらく本屋さん(ブックオフも含む)へといっておりません。本屋の書棚の
前にたたなくては、酸欠状態になってしまいます。このところの不調の原因は
そうでありましょうか。しばらく自宅の模様替えをやっておりまして、いまは
その作業もおわりかけているのですが、居間には本を積まないこととか、
本をいれたダンボール箱をおかないことというようなことをいわれてしまい、
それもそうであるなと思ったことが、本屋に足を運ぶのがためらわれる原因で
あります。
 一冊百円の本を5冊購入しても、財布はあまりいたまないのでありますが、
置き場所には苦労をすることになります。
そういえば、前回にブックオフへといったときに購入したもので、次のものを
話題にしておりませんでした。

ぼくの複線人生

ぼくの複線人生

 資生堂名誉会長による自伝的回想であります。日経に連載される「私の履歴書
のようなものですが、もとは「東京新聞」夕刊連載の「わが道」というものとあり
ます。
 複線というのですから、単線ではないということになりますね。創業者の孫と
して生まれて、経営トップになることが期待されていたのだと思いますが、自分
らしく生きて、会社も成長させるというのが、この本の見所でありましょうか。
 どうしてこのような生き方ができたのかと、いうことについては、次のように
ありです。
慶應義塾の小学校である幼稚舎に入学できたことが、ぼくのその後の生き方を
決めた。
 一つにはモダンな新校舎の学校全体を包むオープンでリベラルな空気。そして
それを支える教育の基本が子供たちの独立にあることだ。
 また六年間の担任となった吉田小五郎先生と出会ったことが、ぼくの一生にとて
も大きな影響を与えた。
 吉田先生は専門は日本切支丹宗門史である。本来なら大学で講義をするべきなの
に、吉田先生は子供が好きだと一生幼稚舎で教えられた。」
 吉田小五郎先生という方は、「日本切支丹宗門史」という翻訳を岩波文庫から
刊行している人であります。こういう人が大学で教えていたのが、当時の慶応幼稚
舎であったのですね。