みすず読書アンケート

 例年2月は「みすず読書アンケート」でお茶を濁しています。ことしも直接に版元に
注文をいたしまして、早々に手にすることができました。
 今年のアンケート特集では、3月11日の大震災とその後の原発メルトダウンに関す
るものが多くて、それだけこれのショックが大きかったことが伝わります。この時点で
放射能は拡散していて、冷却のために使われた水は、どこかに排水されているのであ
りましょう。これが将来の地球に影響を与えないとは、どんなに図々しくともいうこと
はできないか。かっての反原発の立場から学者さんや活動家さんは、ほらみたことかと
いうところですが、それよりも現実のほうがずっと重たいことです。
 「みすず読書アンケート」で一番の楽しみは、山田稔さんの回答であります。
 今回も小沢信男さんと津野海太郎さん、黒川創さんとの鼎談集「小沢信男さん、あな
たはどうやって食べてきました」をとりあげていて、小沢信男さんの大ファンでありま
す、当方を喜ばせました。
 山田稔さんは、この本から「人は生きていたように死んでいる」という言葉を抜きだ
しています。この言葉は、まるで昔のだれかがいったかのように聞こえてきます。
さて、過去の誰がこのようなことをいっているのかと思いましたが、これは小沢信男
んが作った新しい格言(のようなもの)であります。
 小沢さんの鼎談集における小沢さんの発言の一部を引用します。 
「『人は生きていたように死んでいる』っていうけど、没後に、なになにの会っていう
のができるでしょう。・・・・これは、生前から子分を作っていた人たちですよ。
花田清輝の会、長谷川四郎の会なんか、ないでしょう、はっきりしているんですよ、
それは。
 菅原克己の『げんげ忌』は濃密な集まりで、親分子分とはまた違うんだけど。ほんと
に人は、生きていたときのように死んでいると思います。」
 別に文学者の世界に限らず、会社でもなんでもこの手の人間模様はあるものですが、
「人は生きていたように死んでいる」というのは言い得て妙というか、使える言葉で
ありますね。