小沢信男さんによる「野呂重雄」さんの作品評は、たいへん予見的なものでありま
した。
「スリーマイルズやチェルノブイリの野もあります。殷鑑遠からず。原発とその廃棄物
を山ほどかかえて二十一世紀へむかう地球は、もう生者だけの身勝手で運転しきれる
ものでしょうか。」と書いてから30年ほどたって、本年3月の東日本大震災であります。
小沢さんは、「en-taxi」vol32に、「津波のビフォアフター」なる文章を寄せています。
en-taxi No.32 大特集 東日本大震災 (ODAIBA MOOK)
- 作者: 坪内祐三
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2011/04/26
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変身するこだ。と思いきや。幾万人が暮らす街がツナミによって荒野となるのも、
ビフォーアフターなんですなぁ。・・
ABCニュースも、地震二日後の十三日付けで、仙台空港はじめ十二枚のビフォー
アフターを流した。それには福島第一原発は、埠頭の施設が消えた程度で、あんがい
ぶじ。さすがに堅固にみえる。
ところが、ニューヨーク・タイムズの三月十八日のアフターでは、その原子炉四機の
建屋が、もろにぶちこわれている。
みるみる崩壊のなりゆきをアメリカ側は刻々に観察していた。そのいくつかが配信さ
れ、世界のみなさまが仰天なされた。はるか衛星からの俯瞰では、放射能まぶしの崩壊
地に、人間がいるのが理不尽にみえるのでしょう。
むりもないね。ビキニ・マグロやチェルノブイリには、われわれもさんざん気を揉んだ。
・・
クリーンや安全の強調は、一種の虚構だと、災害のたびにわれらは気づく。そのくせ
性懲りもないのは、不自然な都会に住めば幾分やむをえないが、ものには程度がありま
す。
夜の町並みが昼よりよほども明るいのは、やはりおかしい。そして不自然の極みが原発
でした。」
小沢さんにいわせると、だからいわんこっちゃないというところでしょうが、こちら
は、不便になってもいいのかと恫喝されると、びびってしまいます。敗戦と廃墟を経験
している小沢さんの、腹の据わり方が違います。