星めがね

 丸谷才一さんの新刊「星のあひびき」(集英社刊)を手にして、丸谷さんと集英社
どのような関係になっているのかなと思いました。この本の終わりには広告があるので
すが、それはジョイスの小説の翻訳でありました。「ユリシーズ」も「若き芸術家の肖
像」の両作品ともに、集英社からでているのでした。
 この「星のあひびき」には、まえがきもあとがきもなくて、これはすこし淋しいこと
でありますが、前書きのかわりに自作の俳句が掲載されていました。
 「 アジアでは星も恋する天の川 」

 ほかに集英社からでているのは、丸谷さんの対談集とかで批評とか書評というのは、
以下のものしかでていないはずです。

星めがね (1975年)

星めがね (1975年)


 今から35年前の本です。この頃は、大判の文芸誌「すばる」があって、丸谷さんが親
しい篠田一士さんなど批評を連載していました。丸谷さんが、この雑誌をまとまった
ものを発表したという記憶はありませんですね。
 「星めがね」に収録の文章でも、初出が集英社のものというのは、「世界文学全集」
の解説として書かれたもの二篇しかありません。刊行は75年ですから、この時の丸谷
さんは50歳でありますか。こちらには、ちゃんとあとがきがありました。
「 1 これは全集本、文庫本その他の解説として書かれた文章を集めたものである。
   一種の評論集とみて差支へない。
  2 略
  3 『星めがね』とは言ふまでもなく天体望遠鏡の意。レンズの優秀を誇ることは
   できないにしても、すくなくとも数篇に関しては手前勝手な視角の新しさを心中
   ひそかに自慢してゐる。
  4 集英社出版部の鈴木啓介君に感謝する。」
丸谷さんのもので書名に「星」がはいるのは、この二冊のみ。丸谷さんの集英社の本は
星つながりでありました。