文化勲章のこと 9

 本日は、文化勲章授賞式でして皇居での親授の様子がニュースで取り上げられていまし
た。親授式の様子は代表でしょうから、どのチャンネルも同じ映像でしょうが、車寄せで
の映像は、各社ごとにアングルなどが違うのでしょうか。当方の関心は誰か羽織袴で来て
はいないかということと、夫人同伴でしょうから糟糠の妻といわれる蜷川夫人の姿をみる
ことができるかということでありました。(若いころの蜷川さんは、まったくいやらい
ほどへたくそな役者さんでありまして、NHKのこどもがみる時間帯の連続ドラマに出演
していました。(今調べたら「チコちゃん日記」でした。65年4月からの一年間です。
主人公役柴田美保子さんは、脚本家 市川森一さんの奥様、その時に会社の同僚のような
役で人相の悪い男性が蜷川さんでした。)
 それはさて、岩波茂雄さんの授賞挨拶文からの引用です。
「市民勲章とでも称するものありて是を小生に与へられるとせば小生に取りて全然不格好
のこともなかるべく此度の如く気のひける事もなかるべしと存候。・・・・
 今回の小生の文化勲章を拝受するや祝辞を寄せられる方の意外に多く反響の予想外に大
なるには実以て喫驚致候。従来勲章なるものは軍人と官吏の年功者にのみ与へらるべき
ものと一般に思はれてゐたためか小生を知る人は勿論のこと全国に亘り知らざる多くの人
より限りなく祝辞を給はり『当然の当然なり』とか『何ぞそれ遅かりしや』とか或は
『世は明朗になれり』とか殆ど我が事の如く喜ばれ来り候。・・・・」
 文化勲章でありますので、他の勲章とは違って軍人、官吏の出番はないのであります
が、この時点では、他の勲章はまだ復活していないのですからね。
 岩波茂雄さんの長い挨拶文の最後のところであります。
「 出版は重大なる社会責務を負へる教育事業なるにも拘はらずややともすれば営利の
具に供せらるる虜有之候。『当る』『当らぬ』などいふ卑陋なる言葉が今も尚白昼公然
稠人広座にて聞かるる如きは甚だ残念に候。この職業に於ては其の公共性に鑑み営利を
以て第一とするだけは差控ふべきかと存候。出版は賭博に非ずとは小生が従来申し来れる
処に有之我等同業相戒めて出版の本道に直進致したきものに候。」
 「当る、当らぬ、出版は賭博に非ず」というのは、すでに60年も前にいわれているの
でありますね。このあとにベストセラーの時代がくるのですが、最近は「当らぬ、
当らぬ」ばかりになっているのではないでしょうか。