ちくま 9月号

 最近の「ちくま」表紙の表と裏は、林哲夫さんによるものです。
表紙絵は、林さんの「読む人」シリーズからですが、毎月の表紙は林哲夫さんの
ブログページに掲載されています。9月号は、阪急線でみかけた女性の読書する
様子をスケッチしたものです。( http://sumus.exblog.jp/13872395/ )
 電車のなかで読むというと、文庫とか新書とか、雑誌などを手にしている人の
ことを見かけることが多いのですが、阪急線の女性が手にしているのは、どのような
ものでしょう。どうも雑誌ではないようですね。けっこう大判で、そんなに厚くも
ないとなると、どのようなものが思い浮かぶでしょう。昔でいうとアサヒグラフとか
の感じですが、これはそういうものではないですよね。クロワッサンなんかでも
ないでしょう。この女性に似合うのはなにかな。
 林哲夫さんは、もともとは画家でありまして、これが本業ですが、林さんがよく
知られるようになったのは「SUMUS」同人で、古本についての蘊蓄を語るライターと
してでしょう。
 この「ちくま」でも、毎号「ふるほんのほこり」というエッセイを連載しています。
9月号は連載21回目で、「忌々皆々」というタイトルになります。
 今回の書き出しは、次のようになります。
「 文学者の死んだ日を文学忌というらしい。最近知った。これじゃまるで文学は
もう死んでしまったかのようだ。
 歳時記をひもとくと、文学者に限らず、名のある人々の忌日がいろいろと擧げら
れている。」
 毎日のように文学者の誰彼かが亡くなっているのでいるのですから、毎日が誰か
にとっての文学忌となるのですが、有名なのは太宰の「桜桃忌」ですし、生きていた
頃の本人よりも文学忌のほうが有名な感のある菅原克己さんの「げんげ忌」なども
あります。
 林哲夫さんが、この「ちくま」で言及しているのは、湯川書房主である湯川成一
さんの命日である「七月十一日」のことであります。林さんは個人として湯川書房
マークだった孔雀をとって「孔雀忌」と勝手に名付けていたのですが、湯川さんの
親しい方々は湯川さんの俳号から「水雀忌」と呼んでいるようだとあります。
 湯川さんの忌は「水雀」で定着するのでしょうね。
 それぞれの人が、それぞれの呼び名で忌を行ってもいいのでしょうが、当方が、
勝手に名付けている長谷川四郎さんの「山猫忌」にも、どこかのだれかが、もっと
いい呼び名があるぞと異を唱えるひとはでてこないかな。それのほうがにぎやかに
なってよろしいことです。