岩波少年文庫創刊60年 10

「なつかしい本の記憶」の岸田姉妹の対談によりますと、姉である衿子さんは
子どものころ外遊びばかりしていて、妹の今日子さんは「異常に本が好きで、
親の書斎に入って、学校ずる休みしてでも読んじゃうほうだった」のだそうです。
 岸田姉妹の間で、あれがおもしろいこれがおもしろいといって紹介するのは、
いつも今日子さんのほうであったようです。
 衿子さんの発言から引用です。
「(芥川賞を受賞するより前に)雑誌のグラビアで、大江健三郎さんがうちの
山小屋で私といっしょに写された。そのとき『衿子さんの飼っているリスのこと
をポチと読んで女優さんたちにけいべつされた』とか文をつけられたの。
 学生の頃から大江さんの話題や発想が童話的だなって思っていたら、やっぱり
石井先生の童話やら、長新太さんのはじめての絵本『おさるのサランくん』を
愛読している人だったのね。
 その頃大江さんが『少年文庫」のエーメの『おにごっこ物語』を下さったのよ。
だから『おにごっこ物語』は今日子から聞いたんじゃなくて、はじめてこっちが
教えてあげた本なんです。」
 初期の「岩波少年文庫」の書影を掲げるのに、手近にあったものをアップしたの
でありますが、それが「おにごっこ物語」でありました。まさかこれがこのように
つながるとは思ってもみませんでした。
( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20100811 )
 大江健三郎さんが芥川賞を受けるのが58年で、エーメ「おにごっこ物語」が
少年文庫にはいったのは56年のことになります。
 今日子さんが「エーメはフランス人にはいまだにすごく人気があるのに、日本
ではもうひとつね。」といっています。エーメの代表作には「壁抜け男」という
作品があって、これはミュージカルになって、日本では劇団四季が取り上げて
いました。
 当方がエーメの「おにごっこ物語」を購入したのは、小沢信男さんから、
エーメの作品が当方の趣味にあうのではと勧められたからでありました。