新聞書評欄 3

 朝日新聞の書評欄にあった矢内原伊作さんについてのことを続きです。朝日紙面での
紹介は次のようになっています。
 「矢内原伊作 1918〜89 哲学者 著書に『ジャコメッティとともに』など。」
 代表作は「ジャコメッティとともに」(筑摩書房 1969年 )でありますが、これは
事情があるようで復刊できないというのが、まったく残念なことです。矢内原さんの著
書でタイトルに「ジャコメッティ」とはいったものは、いくつかあるのですが、やはり
皆さんは「ともに」にこだわるからして、この本だけ古書価が高いのでありましょう。
 矢内原さんは、大学の哲学の先生でありましたが、なんといってもご尊父様が立派過
ぎてお気の毒な感じがいたします。ほぼ同世代の中村真一郎加藤周一福永武彦
宇佐見英治などはお父上は、それなりの人でしょうが、特にどのような人であるかは
伝わってこないのですが、矢内原さんのお父上はたいへん著名な方でありますからね。
矢内原さんの友人では、辻まことのお父上が有名な方でありますが、辻潤は有名では
ありますが、立派な父ではありません。
 かっての「朝日ジャーナル」に矢内原さんが、亡父についての評伝を連載していた時
は、これは一冊にまとまったら読むことにしようと思っていたのですが、結局は、完結
することなしで、単行本にまとまったようです。(「みすず書房」から刊行となりまし
たが、これは、いまだに読むにいたっておりません。)
 当方の手もとにある矢内原さんの著書は、以下のものだけであります。

 これは、みすず書房から82年に刊行された「歩きながら考える」の表紙であります。
これには、矢内原が描いた江ノ島風景の絵をつかったカバーがかかっているのですが、
表紙につかわれているのは、ジャコメッティによる「矢内原伊作の肖像」です。