蒙古民族統一運動4

 田中克彦さんの著作とくらべますと、「ファインマンさん最後の冒険」は好奇心に
あふれた学者(ファインマン)とその仲間である著者(レイトンさん)による、幻の国
トゥバ共和国」の探訪記録であります。
著者のラルフ・レイトンさんとファインマン博士に二人は、ドンキホーテとサンチョの
ようにみえなくもないのです。
 いまだ数十ページしかよんでいない同書からの抜き書き。
「タンヌ・トゥーバは公式には自発的にソビエト連邦に加入を申請したこととなって
おり、その四年前のバルト海三共和国の請願と同様、その『請願が許可され』た。」 
「 トゥーバ独立記念日のおかげで、僕はアメリカの国務省にも手紙を書く気になった。
わが政府がラトビアリトアニアエストニア三国のソ連併合を認めないことにかんが
み、同じく二つの世界大戦の間は独立国でありながら、先の三国と同じようにソ連
併合された第四の国としてトゥーバ共和国があることを指摘したのである。
そして『アメリカはソ連のトゥーバ併合を合法的なものと認めますか?』と質問した
わけだ。」
 トゥバも考えようによっては、バルト三国と同じように取り扱うことが可能であった
ということですね。これに続いては、国務省はもちろん回答をくれず、トゥバのために
活動するロビー団も存在しないとあります。
 この二人組は、あちこちの大学図書館にあるトゥバ関係の文献をあさるのですが、
1978年ワシントンの国会図書館で「トゥバ紀行」を手にすることができたとあります。
 岩波文庫のあとがきによると田中克彦さんが、この本を読むことができあのは79年の
こととありましたので、ほぼ同時期になります。田中さんが「トゥバ紀行」との出会い
について以下のように記しています。
「 本書のことを私がはじめて知ったのは、記憶の糸をたどっていくと、どうやら
大林太良さんからだったように思う。あるときトゥバの話を持ち出したところ、トゥバ
だったらね、メンヒェンヘルフェンという人が旅行記をかいているよ、といったふうに
教えられ、そのちょっと変わった著者の名が耳に残っていたので、1979年、ボン大学
中央アジア言語文化研究所に二度目の長期滞在を行った際、そこの蔵書からコピーを
とらせてもらったのである。本訳書はそれにもとづいている。」