植草甚一 ジャズ・エッセイ3

 河出文庫 植草甚一「ジャズ・エッセイ 1」には、「コーヒーと古本と
モダンジャズ」というタイトルの文章があります。
 植草さん自身が、ジャズと本が大好きであったのですから、この文章が
楽しくないはずがありません。書き出しの文章は、次のようになります。
「 街の中を歩きながら、ああ、きょうは古本をだいぶ買ったなと思うと、
うちへ帰るまえにコーヒーが飲みたくなるものだ。歩きすぎて、すこし
疲れているし、おいしいコーヒーをだす喫茶店にはいって、買った本を
パラパラとめくるのが、もう長い間、ぼくの癖になってしまった。
 モダンジャズがすきな人は、見渡したところ、本が好きな若い人たち
多いようだ。・・
 古本のことから話しはじめたけれど、神保町あたりをさがしまわっても、
そう欲しい本がないのでがっかりすることがある。そんなときは、神田
日活館の裏通りに『響』というジャズ喫茶があるな、ちょっとよってみよう
かしらんとか、御茶の水駅にいくまでに『ニューポート』があるから、そこで
モダンジャズを聞いているうちに、どうしようかという考えが、まとまって
くるだろうと思いはじまる。そこへゆくと新宿には古本屋が二軒しかない。
そのかわりジャズ喫茶はたくさんある。「木馬」「とか、「ポニー」とか、
「びざーる」・・」
 この文章は69年3月に発表されたものですが、それから40年近い
歳月がたっています。古本を話題とするブログをあちことでみかけるので
ありますが、なかには、ジャズも好きとあります。こうした人は、当然の
こととして植草甚一さんの著作を好んでいるのでありましょうか。