中野書店「古本倶楽部」

 本日も内容見本の話でお茶を濁そうかと思っていましたが、仕事から帰宅しま
したら、中野書店「古本倶楽部」で注文してあった本が届いておりましたので、
その収穫について記することにしましょう。
 古本のソムリエさんのブログにありましたが、今回の「古本倶楽部」は大半が
3割引です。いつもは手がでないものも、なんとなく気が大きくなって注文を
してしまいそうです。そこのところを思いとどまるのは、意志の強さでありまして、
書痴とか書豚となっていない証拠です。
 「古本倶楽部」に載っている本の最安値は1575円となります。これに送料が
つきますので、2千円でおつりがすこしというのが、いつものパターンですが、
3割引となると送料を負担してくれるようなものです。毎回注文はしなくなって
いるのですが、カタログをつくるだけでもコストがかかっていると思うと、注文を
しないと申し訳ないという気分になります。(「月の輪書林」のように注文いただ
いたはがきが、次の目録をおくる住所リストになりますといっているところも
ありです。こうしたときは、はずれそうな注文をあえてだすなんてテクニックも
ありでしょうか。)
 今回の収穫は、高杉一郎さんの「極光のかげに」目黒書店とバイコフさんの
「偉大なる王」でした。これはわかるひとにはわかるシベリアつながりとなるので
あります。
 バイコフの翻訳者は長谷川しゅんという人で、この人は函館市が生んだ有名兄弟で
ある長谷川海太郎( 林不忘牧逸馬、谷譲治)、洲之内徹のお気に入りの画家である
長谷川りん二郎(探偵小説も書いていますが、その時は地味井平造といいます。)、
長谷川四郎(マイフェイバリット作家の一人)という兄弟の一員で、一番有名ではないの
ですが、ロシア語が堪能で、ロシア貿易船の通訳などをしていました。この兄弟に
ついては、川崎賢子(よく考えるとすごい名前、これで賢こくなければどうする。)さんが、
「彼らの昭和」という著作をものにしています。この長谷川兄弟のお父さんは、佐渡
北一輝を教えたという経歴ありです。
 長谷川四郎さんは、ロシア語ができるがために、敗戦後にシベリアおくりとなって
復員がずっと遅れたのですが、そのときの体験をもとに「シベリア物語」という
作品をかいてデビューしたのでした。
 高杉一郎さんも、ロシア語ができるがために帰国が遅れたのですが、帰国して
すぐに「極光のかげに」をあらわして、これは大ベストセラーになったのです。
小生が、入手したのは昭和26年10月10日(小生は生後8ヶ月)14刷となって
います。当時はまだ紙の供給が十分ではなかったので、洛陽の紙価を高めたと
いわれたのでした。
 「偉大なる王」は昭和16年3月に文芸春秋社よりでています。もともとは
満州日日」という新聞に連載されたものだそうです。この作品は、別な人に
よって訳されていまして、いまは中公文庫に入っています。この作品と、四郎さんが
訳した「デルスー・ウザーラ」は、同じような背景によっていると思うのです。
この本には「まえがき」がありまして、それは「菊池寛」が書いているのでした。
そうか、この時代は菊池寛がまだ生きていたのかと、はじめて知りました。
 翻訳者の言葉には、次のようにあります。
「 今年の一月頃、別役君(現在ハルビン高等検察庁思想科勤務)からハルビン土産に
『偉大なる王』を贈られた。・・私はその本を手にして、初めて王が人間でなく、
満州の恐怖の大虎であることをしった。」
 この別役さんというひとは、長谷川四郎さんの文章にも登場するのですが、
この方の息子さんが、劇作家 別役実さんなのでした。
 このブログ、明日はお休みとなります。