「蜂起には至らず」講談社文庫

 小嵐九八郎さんという作家は、そのむかしに新左翼の活動家であったとのことで、
長く収監されていたようなことを読んだ記憶があります。この人の小説作品はまったく
読んだことはないのですが、ちくま新書にはいった「妻をみなおす」は、タイトルに
ひかれたせいもあって、購入して読みました。( 内容をほとんど忘れているのが
なさけない。)
 そのころでしょうか、講談社の冊子「本」に新左翼死人列伝というのを連載する
ようになりました。これらの死者たちは、小生よりも年長ではあるものに、小生の
世代にとっては伝説の人々でありまして、こうした人々についての文章が、講談社
PR雑誌に掲載となるのが、不思議な気になったのです。
 それがまとまって「蜂起には至らず」という書名で刊行されたのですが、この本の
黄色いカバーを目にして、これを買うかどうかと書店で悩んだことを思い出します。
結局のところ、これは借りて読みましょうと思っているうちに、時間がたってしまい
ました。
 今回、講談社文庫になって、やっとじっくりと手にすることができました。
 この本に登場する死者たちが生きたのは60年代から70年代のはじめですが、
享年を見てみますと、圧倒的に20代が多いのでした。まったくもって、このような
時代があったことを、どのように伝えていけばよろしいのかと思います。
とにかく純粋な若者たちほど、足下をすくわれます。最近のイラク情勢のなかで、
サドル派が分裂するなんてききますと、かっての新左翼党派の分裂のことを思い
浮かべるのでありました。