小沢書店のこと

 先日に長谷川郁夫「われ発見せり」にふれたとき、次は「藝文往来」を話題に
しようと思っていたのですが、これがなかなか形になってきません。
本日に山本善行さんのブログをのぞきましたら、「藝文往来再読」というタイトルに
なっていましたので、ますますひけてしまうことです。
 この「藝文往来」をみておりましたら篠田一士さんのことがとりあげられています。
鍵谷幸信さんの49日忌のあとに、篠田さんが「吉田秀和さんは白水社思潮社
寺田透さんを頼むよ、小沢書店は秋山駿だ」といい放って、これで安心したと大笑い
したとあるのでした。これから40日もたたないうちに篠田さんはなくなったのだ
そうです。
 小生は、篠田さんの著作集をだしてくれるのは小沢書店であると期待をしておりました。
篠田さんの一般的な著作はほとんどすべてもっていたのですが、それでも著作集が
刊行されれば、これは買わなくてはいけないぞと思っていたのです。
 死後に小沢書店からでていた「Poetica」という冊子で「篠田一士」の特集を組まれて、
これをみたら、これは篠田の著作集の準備にはいるのだなと思ったものです。
 この冊子には篠田さんの略年譜がありまして、ここには息子さんの誕生と名前がのって
いるのですが、これと同じ名前の学者さんの講演を聞く機会がありました。ちょうど
春闘の時期でありまして、組合が招いたのですが、その事務局に知人がおりましたので、
今回の講師は、ひょっとして篠田一士先生の息子さんではないかと確認をしたことが
ありました。小生のもくろみとおりでありまして、篠田先生の次男さんでありました。
 小生がいかに篠田さんに恩があるかということを一方的にお話をしたのですが、
息子さんは畑違いの労働法の学者さんでありまして、父親の業績にはまったく関心が
ないというような具合でありまして、年譜には息子さんのお名前がのっているのですよと
いいましてもそうですかという話でした。
 この時に、息子さんに対して、著作集がでることを期待していて、だしてくれると
したら小沢書店しかないと思うのですがと語ったのですが、あれは何年前のことでありま
したでしょうか。
 小沢書店がなくなって、篠田一士著作集は永遠の幻となってしまったようです。