岩波少年文庫創刊60年 8

 「岩波少年文庫の発刊に際して」というマニフェストは、どなたが書いたので
ありましょうと思っておりました。少年文庫の生みの親のような存在である石井
桃子さんがかかわっているはずとは思いましたが、昨日にも引用した「なつかしい
本の記憶」におさめられている「中川李枝子」さんと「山脇百合子」さんの対談に
その答えがありました。中川さんの発言からです。
「 私、ここを毎回読んでは血がたぎるわけよ。『未曾有の崩壊を経て、まだ立ち
なおらない今日の日本に、少年期を過ごしつつある人々こそ、私たちの社会にとって、
正にあのみずみずしい草の葉であり、若々しい枝なのである。・・・・
 感動したのは、私が中学生だったから。うれしかったの。ああ、私たちは期待を
かけられているんだって。あのころ、子どもは大人にとって足手まといみたいだった
じゃない。石井桃子さんのお話によると、すこし文章がおおげさではないかと言われ
たそうですが、あれでも吉野源三郎さんがだいぶんおさえてお書きになったとの
ことです。」
 1950年12月に、マニフェストを書いたのは、岩波の編集者であった吉野源三郎
さんでありましたが。今でも「君たちはどう生きるか」の著者として知られて
いる吉野さんですが、こうしたマニフェストを書くには最適のお一人といえますね。
( 岩波文庫マニフェストは、三木清によるものといわれています。)
 創刊50年となった2000年に新しい「岩波少年文庫」のマニフェストにかわって
いるのですが、最初のマニフェストも容易に目にすることができるようになって
いればいいのですが、いまでは古い少年文庫にしか掲載されておりません。