2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

新潮社「波」7月号

昨年1月に亡くなった父宛の郵便物は、さすがに届かなくなりましたが、 新潮社「波」だけは、毎月律儀に届くのありました。以前は、「図書」とか 「ちくま」なども購読していたのですが、更新の手続きを忘れたようで、 いつの間にかこなくなっている、不思議…

「宇滴集 文学的断章」4

大岡信の「文学的断章」は「ユリイカ」に休載の期間も含めてほぼ10年間 続き、青土社から6冊の単行本となりました。 「彩耳記」「狩月記」「星客集」「年魚集」「逢花抄」そして「宇滴集」であり ます。 「題名について補足するが、『記』二冊、『集』二…

「年魚集 文学的断章」3

この「年魚集・文学的断章」には「文庫本ばなし」という章があります。 この文章はいつもの「ユリイカ」に掲載のものではなくて、雑誌「展望」に のせたものが、はいってきたものです。ちなみに年魚というのは、鮎の ことであるとのことです。これに収録の文…

「狩月記 文学的断章」2

「復軒旅日記は、大槻文彦博士が一代の大著作大言海に身心を労せられる合間、 折々の備忘用に書き続けられた筆のすさびではあるが、一面大言海資料探訪の ノートともいうべく、国語語源に関する新説が随所に記され、この大国語学者の 工房日記としてまことに…

「狩月記 文学的断章」

「文学的断章」というのは、大岡信さんが第二次「ユリイカ」に連載して いたエッセイです。第二次「ユリイカ」は清水康雄さんを版元に刊行されて その巻頭近くに、この大岡信さんと由良君美さんの連載がありました。 長谷川四郎さんの連載もありまして、それ…

新劇評判記

最近はほとんど新劇ということばを聞かなくなったようです。 新劇というのは、むかしからある芝居と区別する意味から使うのですが、 この評判記は、花田清輝と武井昭夫が対談形式で行われるのでした。 もともとは61年の刊行本ですから、とりあげられている…

「見えない都市」

本日の朝日新聞読書欄を見ておりましたら柴田元幸さんが「たいせつな本」に ついて書いていました。続き物で、前回はまったく記憶に残っていないなと思い ましたら、前回は「英和辞典」について書いているのでした。 そして今回は、イタロ・カルヴィーノ「見…

私の半自叙伝2

本日も蘆原英了さんの「私の半自叙伝」からです。 「私は小父さん(小山内薫のこと)にいろいろの昔話を聞いたが、今でも 忘れられない話に、山田耕筰とささきふさの恋物語がある。この話を小父は 実に熱をこめて、おもしろおかしく話してくれた。あんまり話…

私の半自叙伝

新宿書房からは「エンサイクロペディア・アシハラ」というべき蘆原英了 コレクションが刊行されています。全4冊で タイトルは「舞踊と身体」 「シャンソンの手帖」「サーカス研究」そして、「私の半自叙伝」であります。 「半自叙伝」は73歳のときに「T…

小さなひなげしのように

グローバルスタンダードというのはアメリカ支配のことではないかと 思ってしまう最近の状況ですが、昔はいまよりも文化面においても ヨーロッパの影響が大きかったように思います。音楽でもフランスの シャンソンが日本のヒットチャートにあがったりしていま…

「世界は舞台」あとがき

林達夫さんを囲んで、中村雄二郎と山口昌男が鼎談を行って、それを一冊に まとめたのが86年の「世界は舞台」であります。この本のあとがきは、 山口昌男さんが書いているのですが、この本の仕掛け人は、後に岩波の社長と なる大塚信一さんでありました。 …

朝から誰が読むのか。

朝日新聞の朝刊に文化欄が移って加藤周一さんの「夕陽妄語」とか、 大江健三郎さんの「定義集」を仕事にいく前のあわただしい時間に目に する気分にはならないことです。このような文章を朝刊で読ませようと いうのは、どうせ通勤列車のなかではすることがな…

放浪の王子のような

昨日、ブックオフによったときに百円棚で本を物色しておりました。 そこで購入したのは、丸谷才一さんの「挨拶はたいへんだ」であります。 その昔にでた丸谷さんのあいさつものは、すぐに購入したのですが、01年に 刊行されたこの本は、そのうちに安くなっ…

「ブラックブック」

このまちとしては珍しい晴天がつづきます。 本日は、あちこちの小学校で運動会がありました。となり町の いなか祭りというのがこの週末にありまして、このまつりは お天気がよろしいというジンクスがあるので、わざわざこの まつりにあわせて運動会をする学…

「こんにちは、母さん」

劇作家 永井愛さんの作品がテレビドラマ化されました。舞台で何度か 上演されているものをドラマ化するというのは、作品のイメージがある程度 できあがっているので、むずかしいものです。 結局のところ、NHKではすでに定年となったかっての名演出家をよんで…

「おかし男」

長谷川四郎さんのことを、池内紀さんは「作家の生き方」集英社文庫の なかで、「おかし男」と定義しています。この「おかし男」というのは、 長谷川四郎さんの詩「おかし男の歌」かたとっているものです。 この文章は、「新日本文学」の終刊にあたって、同誌…

「古い手紙より」

本日の表題は、長谷川四郎さんの「知恵の悲しみ」という作品集に収録されて いる小品「古い手紙より」によっています。 「私が、シベリアから帰還してみると義弟はすでに南方で戦病死していた。」 その彼と恋人との間にかわされた一束の古手紙を紹介する書簡…

無級建築士自筆年譜

本日も「建築ジャーナリズム無頼」宮内嘉久さんからの引用です。 「巨大建築に抗議するという著書のなかで、彼(神代雄一郎)はあえて それまで誰もふれようとしなかった、NHKホールの科白の聞こえない客席、 国立劇場の舞台の見えない座席、・・巨大なスケ…

塩1トンの読書

「塩1トンの読書」というのは、須賀敦子さんが亡くなって5年後にでた著書の タイトルであります。表題作は岩波からでている「読書のすすめ」というPR文庫に 収められたものです。 このエッセイの書き出しは彼女が結婚して間もないときに姑からいわれた、…

建築批評2(宮内嘉久)

このブログのために「建築ジャーナリズム無頼」をつまみ読みを しています。昨日も記しましたとおり、宮内さんは戦後建築の真の 出発点は空襲で焦土と化した首都の風景があったといいます。 白いキャンバスではなく、黒い画用紙に絵をかくような趣で ありま…

建築ジャーナリズム

建築雑誌というのがありますが、このような雑誌が、どのような人に よって編集されているのか考えたこともなかったことです。 最近は、安藤忠雄さんのような人気のある建築家もいることから、この ような人の特集をすればそこそこ売れるのでしょうが、建築専…

ナンシー関 追悼

朝日文庫6月新刊でナンシー関「小耳にはさもう」ファイナル・カットがでました。 生前にどの単行本にも収めなかった65本を収録とあります。解説は、ナンシー関の 才能の第一発見者 えのきどいちろうさんが書いています。このあとがきを読んで、 このよう…

藤田敏八への殺意

本日のタイトルは、ちくま6月号に掲載されている「石堂淑朗」の 文章からです。映画監督の藤田敏八と石堂は、同じく東大教養学部の 小さな語学クラスで一緒であったとのことですが、そのときの思い出話を 書いています。 「 新入生の4月頃には何も感じなか…

「京都書院四条店」

ちくま6月号にある間村俊一さんの文章をみましたら、なつかしい京都書院 四条店についての文章がありました。学生時代を京都ですごしたのですが、 70年代前半は四条河原町界隈にも本屋がたくさんあったのです。3月に 京都へといって河原町を三条から四条…

たまった新聞から

旅行中は、新聞とニュースにまったく縁のない日々を過ごしておりました。 帰宅してから、たまった新聞に目をとおしたのですが、気持ちがはいらない せいもあって、ほとんど記事がアンテナにかかってきません。 この間に、音楽家・ピアニスト 羽田健太郎さん…

旅に持参する本

本日の午後から旅行にでることになります。持ち物の点検をしており ますが、最後には旅にもっていく本を何にしようかと考えるのでした。 今回は、時間はけっこうありそうですから、ふだん読むことができて いないものを持っていけないかと思うのですが、荷物…

ちくま学芸文庫15周年

ちくま学芸文庫というのは、普通よりも定価が高いいわばプレミアム文庫と いうものであります。講談社文芸文庫と双璧でありましょうか。講談社にも 学術文庫というものがありますが、こちらのほうは、いまひとつあか抜けない 印象があります。ちくまは学校の…